シニアに嬉しいのんびり海外クルーズ旅行
Bさんと出会ったのは、エーゲ海クルーズに参加したときでした。
初めてのクルーズ旅行ということで、何もかもが珍しく、何を食べてもおいしく、少しはしゃぎすぎであった私たちも、悪い意味で目立っていたような気がしますが、B氏は何をしても自然という意味で際立った存在でした。
かといって旅行を楽しんでいないというわけではなく、デッキに出て何時間でも海を眺めていたり、ゆっくりと時間をかけて食事をとったりと、「クルーズ慣れしている」という感じがなんとなく頼もしく感じられたことを覚えています。
話しかけたのは、確か私からだったと思います。
寄港先の島であれやこれやと土産物を買いこんで船に戻ったとき、B氏はすでに船の中でくつろいでおられました。
「面白いものがたくさんありますのに、買い物はされないのですか?」
何気なく声をかけると、Bさんは、軽く微笑んで、
「ぼくは海を楽しみに来たので、買い物はあんまりしようと思わないんですよ」
と答えられたと記憶しています。
それから自然に二人並んで海を見ながらお話しをしたのですが、そのときに初めてBさんが小説家であることを知りました。名前を出すのははばかられますのでここでは伏せさせていただきますが、つい最近も書店でBさんの本が平積みになっているのを見かけました。
そんな売れっ子のBさんですから、普段はとても忙しく過ごしておられるようですが、ストレスが溜まりきってしまったと感じたときには長期休暇をとり、ゆっくり羽根を伸ばすのだそうです。
そして、長期休暇の過ごし方として最良なのが、このクルーズ旅行ということでした。
「クルーズ旅行のどういう点が、長期休暇に適しているのですか?」
そのとき私はクルーズ旅行初体験でしたから、興味津津でBさんに尋ねたと思います。
Bさんの答えは簡潔でした。
「だってクルーズ旅行は、まさに非日常体験でしょう?」
というのです。
Bさんのように、忙しい作家さんになると、どこにいても、電話がかかってくるのだそうです。
「今イタリアにいますから」と言っても、「それじゃ現地のものをやりますので、大至急原稿を!」などという無礼な依頼もあるのだとか。
その点、船の上にいれば、どんな編集者も追いかけてくることはできません。まさに非日常であるというわけでしょう。そしてそれは忙しい会社員にとっても同じかもしれません。
見渡してみれば、私たちのようなシニア世代に交じって、新婚夫婦らしい若いカップルもちらほらいるようですが、新郎か新婦が忙しい会社に勤めている場合、クルーズ旅行は日常から逃れる新婚旅行として最適なのかもしれません。
Bさんとは、次の旅行の約束はしませんでしたが、同じ関東に住んでいるため、時折電話で話します。普通に暮らしていれば、知り合うことのなかったような人とも親しくなれるのも、クルーズ旅行の魅力の一つ。
どんな旅行でもそうでしょうが、十人いれば十人なりの楽しみがあるのがクルーズ旅行です。
このサイトを読んで興味を持たれた方はぜひ、躊躇せずにまずは体験してみていただければと考えつつ、つたない文章を終えさせていただきます。